まひるのりんかく
たりぽん(大理 奔)

うすあかるい
海風が流す真昼
爪のように剥がれ落ちた
湿った雪がすべてを埋め尽くそうと
降りしきっています

  昨夜の暗い雪雲の切れ目に凍えた
  遠い闇に抱かれた青白い星が寂しすぎて
  眠れないとメールをくれた君は
  きっといまごろは曖昧なこの昼を過ごし
  雪原という名の鳥取砂丘に
  わたしが立ち尽くしていることなど
  思いもしないでしょう

帽子にも、肩にも、背の低い松にも
その存在を埋めてしまおうと
雪は無情すぎるほどに冷たく降りしきってはいるけれど
ぼんやりとした私のかげを埋め尽くせないことに
びゅうううと、風がいらだっているようです

かげは私の輪郭。
誰にも消すことのできないそのままの立像
踏みつけても投げ出しても
この世に私を縫い付ける、私だけの投影

たとえば、あなたのかげが重なって
ふたりという輪郭をこの世に縫い付けようとしても
重なりきれないかげの濃淡が
そのままフラクタルな明日や明後日に
むなしい言葉を生み出すだけなのです
だからかげのない暗闇で
私たちは重なるのですね

  凍える指で
  眠りたい、と私はあなたに返信します
  埋もれてしまいたいのだと雲に願います
  うずくまる防砂林
  まっくろな防砂林


うすあかるい真昼に
ぼんやりとした輪郭すら埋め尽くせない雪
不機嫌に、ごおおと波のように唸って、
沖にむかうランプ漁船が
影踏みする子供のように
見えたり隠れたりしているのです





自由詩 まひるのりんかく Copyright たりぽん(大理 奔) 2011-02-27 21:09:47
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