わたしのこころはサーモンピンク
佐々宝砂

「わたしのこころはサーモンピンク」

そのフレーズを見出したのは
確か「りぼん」誌上であった
もしかしたら「なかよし」だったかもしれないが
「少女コミック」や「プリンセス」や
「花とゆめ」ましてや「Lala」ではなかった

薔薇の花束を抱いた少女がいう
「わたしのこころはサーモンピンク」
「濁ったピンク」
「だけどピンクなの」

薔薇の花束なら深紅がすきだった
白い薔薇はすぐに傷む
黄色い薔薇は持ちがよいけど品がない
薔薇の花束なら深紅がすきだった
だけどわたしに深紅は似合わないのだった


それから年月経って
わたしもいっちょまえに恋に落ちたが
相手のバカ野郎は
深紅の旗を掲げているようなやつで
おまえの思想は濁っている
と批判しやがるので

わたしはかるくあかるく
心のなかでうそぶくのが常だった
そう
「わたしのこころはサーモンピンク」


という青い(んだか赤いんだかの)時代もすぎて
わたしはひとり
窓から半月をながめる
数十年後にわたしがまだ生きているとして
窓から半月をながめるだけの余裕があるとして

そのときやっぱりわたしは
静かにうそぶいてみよう

「わたしのこころはサーモンピンク」



2009.7.14


自由詩 わたしのこころはサーモンピンク Copyright 佐々宝砂 2011-02-14 22:52:56
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