甘酒の味 
服部 剛

初めてあいさつに行ったあの日 
「箸にも棒にも引っ掛からん奴だ!」
と言われ互いにテーブルを平手で叩いた 
嫁さんの父さんが 

同居を始めて数日後 
仕事から帰り 
下の階で勉強する僕を 
「剛君」と呼び 

麻痺の残る体でよたよた 
冬の冷たい廊下を歩き 
あったかい甘酒を、手渡してくれた 

「手伝うことがあれば呼んで下さい」
と言い下の階に来た勉強嫌いな僕も 
甘酒をひと口啜れば 
何故か、やる気が湧いて来る 

(娘を、頼む・・・) 

老いた父さんの無言の声が 
ひとすじの湯気となり 
湯呑みの上に、昇っている 








自由詩 甘酒の味  Copyright 服部 剛 2011-02-07 23:32:54
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