十七歳
アオゾラ誤爆

お風呂場でうたう
大好きな歌を
思い出に聞かせてあげる



きらいだったひとの顔
負けたくなかったひとの顔
いつも屈服せざるをえない
幸運なひとの顔

なにも
なにひとつ
うまく描けないのは
みんな好きだったからだろうか

わら半紙と
士気のさがる正直なクラスメイトたち
髪を切ったあの子
すこし照れてドアを開ける

おはよう
おはよう
おはよう

窓際で耳うちする
きみたちの将来の夢は
しっとしてしまうくらい
まぶしくて
真新しい
砂のようなほほ笑ましさで
わたしをいつも壊していた


 「competentでfashionableな、戦闘服だね、これは。」
 「つまらないジョークだ、そんなことよりも、」
 「資料集でみたあの屋根の色は。」
 「つまらない――歴史は。そんなことよりも、」
 「もうすぐ橋が架かるだろう。」
 「わたしたちには関係のないことだよ、でも、」
 「わたしたちが架けているみたい。What a beautiful――」


たいくつな月曜日に
西日はクレーンのかげを落とす
ぬすみぎきする駅舎の音階を
あらわれる新しい街の足音を
そしてわたしは片思いのことを考えていた

ここにはもういられない
伸びない背と増える正義
すり減る日々と鉛筆の濃さ
中庭の放課


逃げ出したかった朝

またあした
またあした
またあした

指紋をつけてしまって
誇らしげにまわりあるくせまい職員室
まるで
すべてが本のようにしまわれているなら



髪を洗う
数ある昨日ではなくて
わたしにも来るだろうあしたを
抱きしめてあげる

うたう
大好きな歌を

うすむらさきの煙の中で
わたしの遅いあゆみで辿った
でも忘れてもさし支えのない場所

またあした
もう一度
またあしたも
もう一度

うたう
からだじゅうで旅する
そうしてようやく縫い上げる
一枚の絵



自由詩 十七歳 Copyright アオゾラ誤爆 2011-01-28 18:53:56縦
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