ある日の夜明け
たりぽん(大理 奔)

夜明け前の街に出ようと
ドアを開けると
遠くでクラクションが
冷え切った空気をカサカサにします
なにかに溶けていく夢を
見終わる前に目覚めたようです
夜明け前の街に出ようと思ったのは
こんな日だからかも知れません
コンビニの駐車場で
中身の残ったコーヒー缶を蹴飛ばしてしまい
ごろごろって湿って
昨夜の私のようです
よろめくほどに後ずさり
臆病な犬のように目を背けるのです
それでも
私は自分を捜したりしないでしょう
だって、晴れた夜に星座を読めば
どこに立っているかだってわかるでしょう?
輪郭が曖昧なまま
生まれたのは
こんな日だったかも知れません
そらを雪雲が低く覆っているので
こんなにもうっすらと
行方をぼんやりとさせるのです

  世界と自分を隔てていたものが
  この皮膚ではないと予感したから
  何も捨てることなく
  そのドアを開けて出かけるのです

薄暗い街で
ぼんやりとした今日の始まりを
いつもの歩幅で切り取りながら

  始発の路面電車が弦で火花を散らして
  湿った汽笛を鳴らしたようです  




自由詩 ある日の夜明け Copyright たりぽん(大理 奔) 2011-01-08 21:55:31縦
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