雑句(2010-06-21〜2011-01-04)
若原光彦

・2010-06-21

西はもう狼走れ西はもう

火縄銃伝えし者は何処で死に

手も羽根も望みて絶えた鳥ありや

肛門のように無口な奴である

悪人を捕らえる奴等さぞ悪し

手放しで喜び落とすものふたつ

歴史から寿命を引いた日に産まれ

爆弾を忘れた罪はどう重い

扇風機くびふるまでの命かな

愛想も袋も要らず釣りくれろ

濡れ鼠禁煙のガム雨の味

漕げば漕ぐほどよく光る帰り道

例文を書く奴ばかりしたり顔

流星も低きに流れ手を伸ばせ

ありがとう紙につつんでくずかごへ

涙腺のゆるんだ豆腐四ツに切る

∵ ∴ ∃ ⇒(なぜならば ゆえに 存在する ならば)

愛したりしたら飛行機雲かじれ

猫だってお前のことは知らんじゃい

祈るより誓え誓うよりも動け

心臓のないものばかりBランチ

霊魂の宿っていない爪を砥ぐ



・2010-11-12

改札が開いてお金ならあるよ

空想でいろんなものに角を足す

シンプルな問題だから解けないな

海底がよく足裏を刺激する

天罰を嘲った俺に流れ弾

ギロチンでワンレングスに整える

大臣の服は馬鹿でも見えますな

ブラジャーの中は冬でも暖かい

絵に描いた餅は焼けても黒焦げる

すれ違い通信をしに秋葉原

劣情がスイングバイで遠ざかる

爆弾は爆発までが仕事です

帰る家なくて遠足終われない

嘘吐きは嘘に命をかけている

落ちるたび頑丈になる例の橋

看板に傷増えてゆく通学路

見る阿呆ごとに儲かるワンオーダー



・2011-01-03

隣人の欠席の日の風通し

ひとしれず屋上にある雪だるま

機械的作業は機械には出来ず

吐く息の白さの映える黒い靴

何故指輪している野菜室の葱

屁が出ると言って煙草を吸いに出る

そういえばサンタがいないままだった

あとがきが面白かった105円

均等に太っていったいい夫婦

心配したからなぐさめたりしない

無香料だから罪悪感はない

アダルトな楽しみかたが増える箱

脱水に耐えたお前に日は昇る

花あってこその花より団子かな

コピー機で増やして使うカレンダー

新聞はおこたの中にありました

漬け浸し揉み踏み濯ぎ色移る

ひったてい今すぐ俺をひったてい

大声を出したり出たり入ったり

キャンペーン終了記念キャンペーン

今買うともれなく当たる付属品

左利きだと思われていた彼女

乾電池抜きの暮らしに戻れない

気球から小便をする夢を見た

歯ブラシの硬さが妻の気に召さず

影踏みをしながらいつか佐多岬



・2011-01-04

高校も組み体操の下のほう

手を入れて引き抜けたなら腹の虫

左手で鉛筆削る右で書く

宇宙から帰ってきたらひとっぷろ

食欲がなくてもかかる食料費

新橋でサラリーマンを撮る作業

駄菓子屋の売れ残ってるフラフープ

また何か隠してますねお医者さん

地縛霊ですねですかねレントゲン

いつ来てもよく冷えている聴診器

一二五(こたつ独立国)事件

毛穴からこみあげるもの引っこめる

乙女座の男は悩み乗り越える

国連で歌いたい歌ベスト100

このマンガ描いたのきっと変態だ

手がかりが知りたい夜のカーラジオ

〆切を守れる子から伸びていく


川柳 雑句(2010-06-21〜2011-01-04) Copyright 若原光彦 2011-01-05 19:52:03縦
notebook Home 戻る  過去 未来