せせらぎ
ゆうと



僕は時刻表を忘れたけど
家に取りに戻ってる時間がなかったので
そのまま歩いたら
案の定バスは行ってしまって
遠い彼方へ行ってしまったので
僕はそこで足を止めたんです。

たんぽぽがきれいでした。
夕陽がきれいでした。
雲が浮かんでました。
ただそれだけでした。

誰も僕を歓迎していないことくらいわかってる。
しかし僕はありがとうを欠かさなかったので
皆徐々に体温を取り戻していきました。
世界にはするすると水が流れ
ふわりと風が髪を揺らし
やわらかににこりと笑った
君がやってくるのを感じました。

僕はいつもひとりでいたけど
お花見したいねなんて言うから
僕はびっくりしてしまって
手にすこし電流がはしって
ぽかんと口を開けていたい気分だったけど
目が覚めました。

バスは橋をわたります。
じょうずにじょうずにわたります。
いつか描きたいと思っていました。
あかるい絵の具を使える日がきました。

水を得た魚のように
きらきらと空気を吸い込んで
きらきらと光を浴び
きらきらとおよぎました。
僕の世界はあの頃より遥かにあたたかくなったのです。
バスを見送って途方に暮れたときよりも
時間はまわり、あかるくなったのです。

そうして
きらきらという音だけが
夕暮れの空にのぼっていき
夜には流れ星となって
ぽしゃんと川へ落ちていきました。

それを
僕たちは目をこすりながら見ていました。
とてもきれいな夜でした。





自由詩 せせらぎ Copyright ゆうと 2010-11-16 19:10:54縦
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