おうちへかえろう
ゆうと



「さあさあ皆さん、そろそろ冬眠ですよ」

その声をきいて、ぼくたちは数センチ浮いた。
つまり都会っ子の「なつやすみですよ」と同じ意味をもつ言葉なのだ。
家に帰ったときの「おかえりなさい」と同義語でもあるのだ。

あったかいごはんと、あったかい布団と、あったかい、、、なにか、
やさしさみたいなものがあるところなのだ。
家とは、そういうものであってほしいのだ。

ぼくたちはつめたい風をきって走る。
みんなちりぢりになっていく。
はいた息が空にのぼって、おおきなしろいかたまりになり、
いつしかゆきになって、ぼくたちは街に舞い降りる。

待ちのぞんでいた夜だ。
ちかちかと星はおどる。
たのしいのはこれから。
いつだってそうおもっていた。
だからぼくたちはポケットから手を出して歩き、走るのだ。

つめたいほうがいいこともあるんだ、あったかいことにすぐ気がつく。
ねむりの浅い日々をこえて、ぼくたちはほんとうのねむりにつこうとしている。
人生とは、ほんのすこしまえのはなしを、ずうっとながいあいだ語りつづけていくことなのだ。
しかし、しらないうちに家についていることがよくあるように、ぼくたちはそのことをよくわかっていないのだ。





自由詩 おうちへかえろう Copyright ゆうと 2010-11-07 00:27:14
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