剃 毛 後 夜
松岡宮

風がいちだんと激しく身体の梯子を吹き抜けてゆく
ハムストリングス・オーケストラ
身に降りかかる全ての雨を
引き受けませんと呟くビニール袋
やぶれた

もう いらんのです
もう いらん いらん いらんのです
石鹸を用いて泡立てた後に丁寧にそり落とす
ああ いらないね
ああ いらないね こんなもの
そうして強めのシャワーで流し去る

水の音符が下へと走る
水の音符が裏へと廻る
身体を走る水のとおりみちが変わる、寄り道しないでまっすぐ中心、向かって流れて真ん中あたりで、と、裏にはゆかず、パ タ ラ と落ちる、水の軌跡が、下へと、下へと、下へと、走る
ハムストリングス・フェルマータ、
ハムストリングス・ダルセーニョ、
坊主にされて恥ずかしそうです
見慣れぬ膚のキウイが転がる
シャワールームでうれしそう

しかしその日から棘は開始される
ばかなにんげんです
いたいにんげんです
窓を開ければタワシでいっぱいの世界
放置したサボテンがそれでも花を咲かせ
ほつれたぬいぐるみの毛が伸びるのが見える

かなしいねえ
どうして止められないんだろう
かなしいねえ
どうして沈黙できないんだろう

風がいちだんと激しく身体の梯子を吹き抜けてゆく
ハムストリングス・ロケンロール
もうこれで誰にも抱かれないですむ
もうこれで誰にも抱かれないですむ

あなたの妻は安全ではないのです
剃毛後夜のとげを湛えた
危険物でもあるのです


自由詩 剃 毛 後 夜 Copyright 松岡宮 2010-10-03 22:28:25
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