駅・上郡
たりぽん(大理 奔)

そのまま東へ進めば
青春時代を過ごした街まで
たどり着くのだろうけど
特急が進行方向を変えたら
あの北の雲の先に
私の帰る場所がある

中途半端に古ぼけた駅舎の
売店はもう閉まっている土曜の午後
人もまばらなプラットホームで
二両編成の特急スーパーいなば
車掌と運転手が慌ただしく交代して

低く唸るディーゼルエンジン
生温かな輻射熱に汗ばむ
自分で決めた行き先なのに
なにかにゆだねたような
焦燥感でのどが渇く

そうか
いつだって渇いていたな
だから
寒く湿った波の先を
ずっと防波堤で見ていたのだったね
文字だけになってしまったいまでも

「こっちはもう寒いから、なにか羽織ってきてね」

私はどこに帰るのだろうね
車内アナウンスを車窓の遠くにききながら
私はどこにかえるのだろうね


自由詩 駅・上郡 Copyright たりぽん(大理 奔) 2010-10-02 23:44:03
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