Smoky rain
Akari Chika

黒塗りの雨が心地良い

静かな夕立
水びたしの街

揺れ惑う灯りだけ
ひとりぼっちの僕を見てる

光が洩れた
バスルーム
子供の声が
はねかえる

ファミレスの奥で 語り合う人々
コンビニから出た 手を繋ぐ男女

その幸せを
貸してくれ
仮の幸せで
いいからさ

ふがいない言葉に 身を委ねたくなる

土砂降りの中で
満月を見つけて 立ち止まる

マンションの
最上階
暗闇に
唯一灯された光

それは
鍵穴の空いた胸に
ぴたりとはまる光

碇を下ろして 夜を待つよ

水びたしの街

揺れ惑う灯りだけ
ひとりぼっちの僕を包む

鉛のように
くすぶる空
鳥の叫びに
むせかえる

途切れたはずの雨音が
ひそやかな闇と 光を結ぶ

その幸せを
分けてくれ
端の幸せで
いいからさ

忍びない言葉と 泥沼を抜け出して
夜へ漕ぎ出す
水びたしの街へ



自由詩 Smoky rain Copyright Akari Chika 2010-10-02 23:18:10
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