あのライカのこと
番田 

浜辺に砂が少しまきあがっている。男には、アイスクリーム売りや、赤いパラソルの貸し出し屋、肩もみ屋、サンオイル貸し、サーフィン教室の勧誘者が歩き回っている。中古屋は、その手の中に何も持っていなかった。男は午前中のまだ冷たい砂浜の上をうろうろしている。彼らは、肩にカメラを一つぶら下げている。それは彼の回りをダンスするように歩きまわっていく。子供たちを避けながらぼんやり歩いた。するとサッカーをしている少年が回り込んでいく。足下の上を、彼方の砂がまたまき上がっていた。砂へと歩けば、男のそばに白い船たちがいくつも浮かんでいるのが見えてきた。ボールのあみだす動きの足下には、やはりサッカーをやっている黒ずんでいる子供たち。すばしこく動く浜辺の動きのようにはとても見えない。キーパーは俊敏でいてとても柔らかく、男の股下を狙って一個のボールが飛ばされてくる。白い足も男へ、飛んできた。しかしライカを持つ手は、帰ってきた。ボールの遠くにあるのであろう、島に向かって短い足下を振り上げようとした。どこかの買いもの袋は銀色に輝く、カメラの住処だった。あの虫たちは一体どこに消えてしまったのだろうか。男はやがて、借りているその小さな部屋に帰ることにする。

ゴールからあさってきたものだった、一個のギターを持ちなおして、笑いながらこれから覚えようと爆笑している。観衆をかかえている。男はギターが全くひけなかったけれど、思ったのである。


自由詩 あのライカのこと Copyright 番田  2010-07-22 02:28:30縦
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