アイスクリーム
藤鈴呼

溶けるんだねぇ
当たり前の 会話を してる

今は 冷たいけれど

食べる瞬間
つるんと喉を すりぬけて
なかったことに なるの

外側から 喉を 触っても
ああ なくなった と 嘆いても

言葉の通りに 動くだけで
喉の皮は 冷たくなんて ないし
つるんとした 感触も ない

どっちかって言うと
汗で ザラザラしているのかも 知れない

滴は つるんとした イメージだけど
触った瞬間に 
円じゃ なくなるから
やっぱり つるんとなんて してないんだ

何処までも まるいものが 好きで
何時までも まるいものを 望んだ

途中で 気がついたのは
冷たさは 続かないってことと

アイスクリームを 食べた瞬間は
あんなにも スッキリするのに

その直後には どうしても
喉が 渇くんだって 事実

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氷の橋を 渡る
二人 手を繋いで 

何時か 言ったね
この先は 茨の海だと

ねぇ 知ってた?
イバラって
炒めると 美味しいの

調味料は 一滴
赤い実を 一粒 混ぜてね

鉄板で 良く 煎らないと
鮮明な色が 出ないから
それだけ 気をつけて

赤い薔薇の方が
性質が 悪いのよ

あんなに綺麗な笑顔で
平気で 裏切るんだから

ツイ−−ッと 伝う血で
文字だって 描けちゃう

昔ながらの 木じゃない
プラスティックの 真っ白な まな板だから
真に 丁度 良すぎるじゃない?

正に 其れは
ダイイング・メッセージ ならぬ
ダイニング・メッセージ なの

だから アナタ
思い切り 笑ってくれて 良かったのに

どうして そんなに 哀しい顔で
こちらを見るの?

語り掛けたいけれど
擦り硝子の 向日側迄
此の声は 届かない

姿が 見えなくっても
届くなら 平気だと 想っていた
それも 叶わぬ今
氷の橋を 溶かす準備が 必要なのね

ゆっくりと 二人は 手を伸ばす
互いの身体とは 正反対の方向へ

足場が揺れて 濡れて
頬から流れる涙色に 染まった

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これは 本当に ラブレターだったの
涙ながらに 少女は 語る

七月の 暑い夜
したためたのは LOVE オンパレード

長月の夜に 描く景色は
刹那色に 歪むから

梅雨明け 直ぐに 投函してしまおう
そう 思った

夏なのに トナカイが 見えたから
シャン・シャンと 小気味良い音

其れは 鈴の音などではなく
例えば コンビニの上に 有るような
虫除けの 青白い 蛍光灯

かろうじて モスキートなら 分かるって
小さな声で 呟いた

パワー溢れる バイク音に
一瞬にして かき消されたけれど
確かに 彼女は 呟いたんだ

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気を抜いて 横たわり
抵抗が 出来ない時に
口の中で はじける 注射針

身動きが 出来ない
逆らう ことも
ヨダレを 垂れ流すことでしか
抗うことが 出来ない

言いたいことも 全て
飲み込んだまま
唾は 未だ
飲み込まない

麻酔が ゆっくりと 効いて
目の前まで 霞むような 
苦い 感覚
揺れる 感触

銀は 錆びるから
嫌だって 言ったんでしょう?
夢の中で お喋り
子供みたいに おしゃぶり

半分ずつに しましたからね
歌うような 楽しい声に
思わず 耳を 疑う

此の歯は 白い コンクリート詰めだ
未だ 固まっては いない
また 型なんて 取ってる

お土産は ミント臭
デザートの上に 鎮座する葉
いつも あなた 捨てるでしょう?
今回だけは ダメ、ちゃんと
持ち帰ってよね

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自由詩 アイスクリーム Copyright 藤鈴呼 2010-07-18 14:56:29
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