二羽と三羽
砂木

五月晴れの朝
雪が積もったら自然に落ちるように
高めに作った青い片屋根のてっぺんに
ヒキナギが二羽 歩いている
つがいでしか 見たことがなかったから
すぐ近くの電線にとまっている
カラスを威嚇して飛んでいる
三羽めのヒキナギをみて驚いた

二羽いるカラスに まるで自分をみろと
いわんばかりに まとわりついている
一羽のカラスが たまりかねて追っていく
逃げながら土手に隠れるヒキナギ

なぜあんな面倒な事をするのだろうか
掌と同じくらい小さな黄色い体と長めの尾を持ち
だけど チチチと鳴きながら
すばやく飛び去ればいいだけなのに

青い屋根の上では二羽のヒキナギが
ゆっくりと歩いている
ああ と ようやく私は思い当たる

猫も蛇もこない高い屋根の上で
歩いたり はばたいたり
子に練習をさせているんだね
この間 巣を猫に襲われた時
子はみんな死んだと思っていたけど
一羽 生き残っていたんだね

オスだろうか 
自分の体より数倍も大きいカラスに
ひるむことなく立ち向かう
二羽のヒキナギが それを見ている

火の鳥と 異名を持つヒキナギを
粗末にしたら火事になると教わった
大事にして家の守り神にするのだと
でも飛び方も愛らしい小鳥だから
畏怖の念を持たずに 愛でてきたけれど

カラスに捕まったら 引き裂かれるのに
カラスは二羽いるのに
ヒキナギが 一羽 威嚇し続ける
この縄張り争いに負けるわけにはいかないと

火の鳥よ と私は初めて呼びかける
火の鳥の名を持つ者を守ってください
私はあの家族の幸せな姿がみたいのです





自由詩 二羽と三羽 Copyright 砂木 2010-05-27 22:03:11
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