あなたは拾う。石を。躓いて、はじめて出血した記念に。いつか青い星の降る夜。額にのせて眠ると、夢のなかで恋が成就する。
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空が割れて、水が落ちてくる。あなたはいつも、とつぜん訪れる。ウィザードのように笑って、吉凶を運んでくる。選択するのは、もちろん、わたし。
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今日ひとつ、よいことをする。相対的に。 ある日、わたしは狙撃される。あなたの、頭脳のバルコニーが見える、夏のバス停で。
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冬の瞑想からさめて、白木蓮の花が咲く。駅へと向かう道なりに。わたしは、通過するばかりで、ほんとうの現在を知らない。
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光陰。あなたはいまも、さしのばす。母音の距離へ。ふるさとの、祭礼の夜。わたしが握りかえした、そのままの、水色の。手を。
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そしてまた、あなたは潰え去る。銀色の闇に。わたしは、残された、わずかな欠片に、世界の全部を映そうとして。歌いながら、壊れる。
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啓示のように。いきなり、魚が降ってくる。青空の底が、ぬけ落ちて。わたしは、知っていたのかもしれない。青空の上は、海だと。あなたの嘘、と同じくらいには。
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ひからびたこころ、風にさらし、川辺に立つ。夕焼けの重量が肩に沈む。まぼろしに、まぼろしを積み上げた遍歴 は、いま、星をひとめぐりして、眼前の春に追いつく。
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雲が、野辺に、ひととき、春陰の椅子を置く。苔むした石の、立像のかたわら。わたしは、旅人のふりをして、事象の片隅を、行ったり来たり、しているだけ。
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桜のつぼみが。明日にでも、ひらくだろう。あなたは、青空と木々のしたで、ヤンミルズ方程式と、質量ギャップ問題を解くための瞑想に入るだろう。すべての、食うための仕事をキャンセルして。だからせめて、わたしは、最寄りの自動販売機まで全力疾走して、あたたかい缶コーヒーを買ってくる。
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ここは夜の、かがやく湖のような場所です。あなたの、紙の上の、足あとを辿り。ふるえる、指で、墓碑銘をなぞる。太陽ではなく、いつも 心に月を。いつも、心に、満月を。
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今年の。あなたの入学式の日まで、桜は咲いているでしょうか。ああ。またしても、わたしは、季節のうつろいに、とらわれる。まだ、生身である、あかし。暦の上で、死滅する人々と同じに。
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迷宮のショーウインドウから、わたしが召喚するものは、どこまでも、わたし。模倣をかさねて、だんだん小さくなる、世界の日曜日の、雑踏に。行方不明の、自分をさがす。
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ループしてくる。冷たい雨をぬけて、青白いまなざしの遠景に。鶺鴒の囀りの突端に。いくつもの惑星を巡 礼して。未決の表情のまま、名もなく華もなく、ブルースの速力で。ループしてゆく。
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あなたは、花のしたで、賢者の石を みつける。囓ったら、未来が欠けます。注意。いらないので、海のほうへ、アンダースロー(厳守)で投げ捨てる。学校に行って、破壊工作の講義を受ける。
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暗い坂道をのぼる。ときおり、鳥の影が、深層意識を掠める。山巓は、千年の花盛りで、おもむろに、月が上がる。わたしの。ダークサイドに根を張る、出自を思いだす。
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四季の円環を、呪いつつ。プロムナードを、瞑目して歩く。左の、てのひらに、 白い花が咲く。東急ハンズで、夏の帽子と、魔法の杖を買う。明日、死ぬかもしれないので、旅に出る。
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あなたは、金曜日、午前9時10分頃、熱病にかかるだろう。それは例えば電車のなかとか、曲がり角で、ばったり出会うときだが。どんな場合にも、軸足を少し右に移動し、個人的見解により、もっとも美しいと思う笑顔で、挨拶するがよい。
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木々が。身をかがめて、なにごとか囁く。花を、豪奢に捨てながら。耳の奥の、蝸牛神経に。とどいた信号だけを、掬って。あなたは。世界の秘密を、垣間見る。
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あなたは、だまされる。理想や希望に。鏡のなかへ、つづく道は、背後へ、のびている。いかなる象徴も、読み解かずに。みんな、追われるように、自分を。語るに忙しい。
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忘れられたころに、世界が帰ってくる。ずいぶん眠った。あなたの目覚めに。間に合わなかった罰として、ひとを愛した。わたしは、だらだらと、循環する幸福のうちに、死ぬことを。恐れはじめている。
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風へ。分解する。誰にも、気づかれずに。あなたは、自由に出血をくりかえし。月の夜に。魂の言葉を、黄金比で割って。遺書を、したためて。忽然と。去る。
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