凝視
あおば

                       100403



表面から融けだして
底まで達すると
真っ黒な地面が現れる
雪が溶けた
春が来たと思う
草が生えて
花が咲き
枝が茂り
初夏を迎える
梅雨が終わる頃には
セミ供が喧しく鳴き出して
夏の盛りを宣言する
その後は雪が降り積もるのを待つばかりだと
キーボードが結論を早めた
そこまでで時間を使い果たしたのです
電源を切りますから
ご承知置き下さい
二次電池の容量は45A/Hなので
バックアップは録れませんでした
幸運を祈るとの声を聞いたような気がしたが
ディスプレイが切れて
静かになった
春になると我知らずに
こころが浮き浮きして
いつの間にか停電になっていたのに気づかなかった
日々の暮らしの中にも
冒険と隣り合わせの幸運に助けられて
なにごとも無い気で居たのが油断で
幸運がいつまで続くかは
誰も保証してはおりません

溶けだした雪の面を吹く風が冷やされて
湿った気分を蓄積しては過熱したがる二時電池を冷却するのかもしれない
自然現象を巧みに利用するのがエコだと思ったが
ポイントは付かないと知ると見向きもされないのだから
二次電池は過熱しっぱなしでそのうちに電極が融けるかも知れない
その前に爆発するかもしれない
無料保証期間が過ぎた製品は何時故障するか
運を天に任したような気分で充電スイッチを入れる
無音の間は大丈夫かも知れないと
淡い期待を抱いたまま凝視する


自由詩 凝視 Copyright あおば 2010-04-03 18:32:35
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