ゲットー / ****'99
小野 一縷



150多面体の黒い水晶体の内部で鋭角的に飛び跳ねている
鼓動の輝きの虹色を錯乱とは呼びたくない
電気仕掛けの精巧な弓と電子制御の精密な槍を携えて
現代の現在 
再発掘された土着的神経伝達組織のみ信奉する
耳を焦がす和音に飛び火する弱電式の蛍
瞼を掠める煙に絡み付く微電子の夜光虫
心拍する弁の強震に散るがいい



160の不揃いな面を備えた水晶の中では放射線が連射され複雑に跳ね返っていますがリズムを打つ度にぱっと散るその明るさを単純に虹色と呼びたくありません。電気的に操作される正確な弓および電子コントロールの精巧な槍を獲得した私の現在一瞬の動体視力。この再発見再構成された神経トランスファーだけを今は信仰します。ひらひら飛んできて両方の耳穴毛を焚き上げて脳皺をぴりぴりさせるハイハットへのヒステリックなスクラッチ摩擦熱の連続は弱電流を帯びたホタルの霧です。漂流するプランクトンの吹雪を掻き分ける海藻のゆらゆらを思わせる電子的夜光虫は冷たいコンクリフロアの中から噴出して煙に絡まりつつ瞼の中に張り付いてきます。

それらは、心臓バルブの揺れで拡散・集合を往復 リピート 繰り返しますが、いつどこの誰の心拍における話でしょうか。これは。

こんな場所で閉じてしまった心の中のお話でしょう。きっと。

でもそんなことは どうでもいいはずなんです。ここでは。


−club ghettoにて−


携帯写真+詩 ゲットー / ****'99 Copyright 小野 一縷 2010-03-17 19:51:02
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