あおば

                  100309




並四ラジオの整流回路
小さな容量のキャパシターに
少し大きすぎるインダクターが繋がって
交流をぎごちない直流に変えている
いまではなにをやっているのと
常識を疑われるような数値です

電源を入れると
すぐにブーンという低音のノイズが聞こえる
ハミングするような好い気持ちではないけれど
ハムと言ったりして
電気が通じているのが分かる
そのうち
傍熱型の検波用三極真空管227が暖まり
カソードから熱電子がアノード電極に飛んで行く
微小な電子が光速を意識しながら勢いよく飛んで行くが
光と比較する間もなくアノードに到達してしまう
光速とか電波とか高級な意識とは無縁に
整流回路で漣を立てている直熱型整流管12Bは理論を忘れて227のアノードに電流を供給するのに忙しい

227が作動して
電波に乗った音声が耳に聞こえる低周波となり
出力型三極真空管12Aを駆動して
マグネチックスピーカーを
うるさいくらいに鳴らす
下手な歌手が歌っているのかと思ったら
そうでもなくて
大きい音が
それだけで価値があると信じられていた時代の設計方針のようでしたので
少しうるさく耳障りな
漣のようにブーンと鳴り続けるハム音が
並四ラジオの鼓動のようで
聞こえている間は安心できると
貧弱な整流回路を
今様に改善するのは止めようと思う





「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作。タイトルは、小川 葉さん。


自由詩Copyright あおば 2010-03-09 14:12:50
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