故郷日和
霜天

一時間に一本だけの電車の中で居眠りをしてみると
回想の中で自分の自分に逢えるので
もう一度と思ってみても
一時間に一本なものだから
すごく困ってしまう


ぼくらは、たまに
どうしようもなく


故郷は、秋色で、待ち構えているので
ほんの少しだけ、寄り添ってみたくなる
いつの間にか身につけていた
余計なものを整理してみると
自分のかたちだけが残った
いざ取り外してみると
一歩も歩くことが出来なくなっている
吸い込んだ息と
爪先までの空間
それだけで歩けた
はずだった
のに


どうしようもなく
思い返しては

駅の柱に刻まれた誰かさんの名前が、そのままなのを確認してから
一時間後の居眠りを予約してみる
爪先までの空間に息を詰め込んで
いつか飛べなかった、あの丘の上から
次こそは飛んでみせようか、と
揺られ、夢見る、眠りの縁で
思い出せないことも一緒に

振り返る


ぼくらは
ぼくらは
どうしようもなく


自由詩 故郷日和 Copyright 霜天 2004-09-30 02:22:37
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