会いたい、ただそれだけで
窓枠

いっそのこと泣きくずれてしまいたい

切にねがった 冬の夜

凍りついた感情をさらけだせず
夜風に旅立っていくのはいつだって
かりそめのわたし


一面の雪に埋まってしまった
ぬくもりを探して
冷たい結晶を手にしてみれば
音もなく
逃げていった
指の隙間に空虚だけを残し

わたしの愛しい人は
そう 一番に会いたい人ほど遠く
かすれて見えるの


春どけを待たずして
砕かれた氷河は散り散りに
北極のわたしたちは
いつしか北と南で対極し
たった一言の交信をした
(会いたい。それだけのことが、
 それだけの意味が、地球の温暖化よりも重いのです)


身動きはとれない
わたしの行動範囲は限定されたもので
ふきのとう
の ようにじっと待つ
けなげさを身に施して
春になればと
ながく
浅い眠りについている


また明日も
陽は昇るのでしょう

緑が息を吹き返し
桃色の宴に人々は再会を祝い
あちらこちらで蕾がひらく
待ち焦がれた 笑みに溢れて


あなたはどこにいくのでしょうね
わたしはずっと ここにいますよ


わたしの春どけはまだまだ
先なのかもしれません

この体ではふるえすぎて
声すらも出せません
薄い網膜はとうの昔に氷ついて
涙も流せないでしょう

わたしはただ一点を眺め続ける

健気さが砕かれないよう
あたためてください
 とかしてください

極寒の凍土にて
 わたしが永久保存されてしまう まえに

 


自由詩 会いたい、ただそれだけで Copyright 窓枠 2010-02-12 13:07:58
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