会いたい、ただそれだけで
窓枠
いっそのこと泣きくずれてしまいたい
切にねがった 冬の夜
凍りついた感情をさらけだせず
夜風に旅立っていくのはいつだって
かりそめのわたし
一面の雪に埋まってしまった
ぬくもりを探して
冷たい結晶を手にしてみれば
音もなく
逃げていった
指の隙間に空虚だけを残し
わたしの愛しい人は
そう 一番に会いたい人ほど遠く
かすれて見えるの
春どけを待たずして
砕かれた氷河は散り散りに
北極のわたしたちは
いつしか北と南で対極し
たった一言の交信をした
(会いたい。それだけのことが、
それだけの意味が、地球の温暖化よりも重いのです)
身動きはとれない
わたしの行動範囲は限定されたもので
ふきのとう
の ようにじっと待つ
けなげさを身に施して
春になればと
ながく
浅い眠りについている
また明日も
陽は昇るのでしょう
緑が息を吹き返し
桃色の宴に人々は再会を祝い
あちらこちらで蕾がひらく
待ち焦がれた 笑みに溢れて
あなたはどこにいくのでしょうね
わたしはずっと ここにいますよ
わたしの春どけはまだまだ
先なのかもしれません
この体ではふるえすぎて
声すらも出せません
薄い網膜はとうの昔に氷ついて
涙も流せないでしょう
わたしはただ一点を眺め続ける
健気さが砕かれないよう
あたためてください
とかしてください
極寒の凍土にて
わたしが永久保存されてしまう まえに