窓、全開
あおば

                100128



台風の日は
窓を全開にしてください
窓があると
空気抵抗が増して
壁が潰されてしまいます
強烈な風に
窓から窓へと
通り抜けていただいて
ご機嫌良くお帰り願うのです

うーむ!
名案と部下に命じて
社内放送で流す
要領の良い者に
放送局と
新聞社
ついでに地元のケーブル会社
ブログにも書き込んだ
このようにして
妄想のようなデマが
旧城下町、現県庁所在地に流れると
夢想する

暴風の時
窓を開けると
屋根が飛ばされる
キティー台風の時にも
よく見られたと古老が話す
大洪水の前に
屋根が飛ばされて
それから水が押し寄せる
頭からずぶ濡れになり
文字通りの濡れ鼠の姿で
暴風雨が通り過ぎるのを待つ

ルール違反の処罰が厳しすぎると
マナー違反の常習者は怯える
法律違反をしない限り
大丈夫ですと
警察官のような男が
道で交通整理をする
左右を注意して渡るのが常識だと思っていたが
此処では
警察官のような男の指示で横断歩道を渡る
待ちきれなくて
青信号に従って渡った男は
注意されて叱られて
面白くない
彼は
警官ではない
警官のような男だが
警官ではない
それでは彼は何なのだと
仔細を伺うと
どうやら民間人のようで
何の法律的な権限もないのに
この私に注意して
衆人環視の中で恥ずかしい目に遭わせてくれた
いまに見ろ
復讐してやると
瞋恚の炎を燃え上がらせて
借りてきたダンプカーで彼の姿を追い求めて
日本中を走り回る
そんなことする人は居ないと君は言うか
僕は信じているぞ
なにがあっても不思議ではない現在
窓を全開にすると
なにが起きるかは
予想も出来ないのだ
怖いから
窓をぴしりと閉めて
居るのだか居ないのだか分からないようにひっそりと引き籠もる





「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作。タイトルは、小川 葉さん。


自由詩 窓、全開 Copyright あおば 2010-01-28 11:24:00
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