宇宙
九重ゆすら

慟哭はたちまちの内に凍りつき
ひとつの惑星になってしまった
あまりに穏やかなその姿を
僕は畏れた



硝子ほど鋭利ではないけど
涙ほど優しくもなくて
だけど人を殺すことはできる
そんな宇宙で
太陽の黒点はなおも黒く
月の海はなおも白かったから
その光景を丁寧に瞼の裏っかわで記憶した
見知らぬ光と共に とても多面的に

やがて
透明な波が僕を飲み込み
とてつもない熱と一緒になって
激しい風が巻き起こった
だから暫くぎゅっと目をつぶっていたのだけど
波が消えた頃には左手の人差し指の爪が
ほんのちょっと、欠けていた
それで僕は、星が生まれた事を悟った

今の爆発で
きっと世界の嘘は焼き尽くされたよ

輝きが崩壊して
新しい輝きが産まれる
星の産声は無音だ
呼吸など覚えていないから
とても美しい姿でそこにある


自由詩 宇宙 Copyright 九重ゆすら 2010-01-18 19:13:52
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