猿のうた
梶谷あや子

 うたっている 腫
れは四つあって 猿
には片目がない あ
の草はらはぼくの腕
の内側にはぜている
今も 白い土と赤い
石が落ちている 腫
れているので穴は塞
いでしまった 探し
てみたがどこにもな
い ぼくに躯を収め
られない 魂はぶら
ぶらしている

 これはラテン語だ
よ うたっている な
んとも言えずうっ血
している 猿はやわ
らかい 怒ってはい
ないようだ 尻尾が
林に落ちて やみを
ぱたりと閉じてしま
った ぼくはお守り
を探している 探し
ていながら逃げてい
た 土も石もぼくの
ものだ 腫れは四つ
あって 擦れてなく
なりそうだ ぼくの
腕の内側で 広い草
はらが割れるように
穴の上を 痩せた虹
が落ちる





自由詩 猿のうた Copyright 梶谷あや子 2010-01-17 20:02:16縦
notebook Home 戻る