
ぼくは高校卒業まで叔父叔母に育てられた
母さんはぼくと妹にいちども会いに来なかった
誕生日にはお金が送られてくると叔母は言っていた
叔母ぼく妹で買い物に出かけると
きまった店でよく服を買ってくれた
その店のショーウインドウには
顔のない四人家族のマネキンがあった
マネキンのこどもの着ている服が魅力的で
妹はそれを欲しがることが多かった
ヒロもこれにする?
叔母がぼくに目配せをする
ぼくが少しでも嫌なそぶりを見せると
妹はくるったように泣いた
叔母がマネキンの母親役の服を買うことはなかった
ぼくは叔母が本当の母さんではないことを
そのたびに思い知るような気がして嫌だった
顔のない四人家族のマネキンに
ぼくと妹がおさまってしまうのが嫌だった
中二のとき万引きで補導されて
叔母が迎えに来てくれたことがある
叔父叔母はそのことを何も怒らなかった
その日の晩ご飯で
ぼくはちゃぶ台を突然ひっくり返した
おまえら、みんな嘘つきや、
叔父叔母にどなりちらし
ぼくは妹をけってしゃがみ込んで泣いた
しゃくりあげて泣いた
次から次へと涙があふれた
おばちゃん、なんでかぜんぶ分かんねん、ヒロがリサとかおばちゃんのこと大切に思てくれてるの、・・・・・・
叔母も泣いた
ぼくも泣いた
妹も泣いた
叔父がはじめてぼくを殴った
photobyライラック