マザーズ
小川 葉


母の少女時代を知らない
わたしが知っている
あの少女たちも
いつしか母になっていた

その子らもまた
少女時代を知らない
わたしたちになっていて
知らないことは
いつも目の前にあるのだと
いつからか気づいている

ゴム飛びのゴム紐が
速度を落とさないまま
ゆっくりとまわり続けている
輪の中にいた少女たちが
消えてゆく
消えてゆくだけで
あらわれることはない

名前に
さんずいがあることを
気にしていた母は
どこまでも流されていった
自分を憂い
その人生を恨んだ

母よ
その瞳の海の
荒れ狂う波のその先で
わたしたちは待っている
あなたの少女時代が
今はないのだとしても

メリークリスマス
母さん
あなたから生まれた
たくさんの少女たちが
陸の突端で待っている
あなたになりたくて
いつか母になりたくて
ゴム飛びをし続けている


自由詩 マザーズ Copyright 小川 葉 2009-12-22 23:58:17
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