五重塔(その2)
あおば


                      091110


屋根が五重になっていて
天高く聳えるが
警護の僧兵が巡回するから
寝そべっては居られない

五十の塔が
空高くそびえ建つ
現在の大都市の忙しい歩道の
鉄骨色した青春像の
一九二〇年代のカーキ色の軍服から落ちる
薄くなったセピア色の写真は
語ることなく主張するが
染めたばかりの軍服を着て
セピアカラーの
保存運動に立ち上がったのは
五重の塔の輩
三重の塔を従えて
北をめざして東海道を駆け上がる
まるで朝敵征伐の官軍のようだねと
笑っていたが
今では
五〇の塔に囲まれて
ビル風に悩まされされ
ワンピースと
缶ジュース
コインランドリーの前の
無意味に引き延ばされた景色の中に
エンパイヤステートビルから始まったかのようなイメージを
大型の浴槽で念入りに洗濯した
破れたジーパンを履いて
まるで官軍のようだねと
言いながら
息の続く限り
へたくそな
笛を吹く
拾ってきた
玩具のブリキのラッパでも
近所迷惑にはなると
自信を持って
朝から晩まで
吹き鳴らす
天雷のように轟いたのは
偶発的な空の息
色のない音の世界に塔建てる
倶利伽羅峠の補機蒸気機関車D51
三重連の力行(りっこう)




自由詩 五重塔(その2) Copyright あおば 2009-11-10 12:57:10
notebook Home 戻る  過去 未来