passage
あおば

                 091026


水の上からの眺めを
台風が
せせら笑うように
湖岸の木々は
大枝を揺らして
今にも根本から
倒されようとしているのが
テレビ画面から
伺える
台風は
ここぞとばかりに
風を送り込み
湖底の
秘密が
暴かれるのを恐れて
竪穴住居に移り住もうと
好奇の侍達が
ハイスピードボートに乗って
狭いクリークを右往左往
前後に転進を繰り返している
先に入り込んだものは
見通しを誤って
隘路に倒れ
後から押しかけた大勢は
見えない中州に乗り上げ
座礁したりして
その後ろからも次々とフルスピードで付き従う者どもの
エンジンの響きが
風を切り裂くように
悲鳴となって
ひとしきり
聞こえた後は
ビーボーとなる風の音が支配して
波は荒く
沈んでゆくボートの群れにのし掛かり
引き剥がし
散乱させて
湖は
海となっていた

「風の復讐」というタイトルをつけ
懸賞に応募投稿したが
なんの返信もなく
投稿の海に沈んだようだ
しかばね共が
のたうちながら
リサイクルされる日は
来るのだろうか
静かに回転する物音が
部屋の隙間から
気の抜けたビールの匂いを運んでくるから
そろそろ此処も逃げ出さなくてはならないと
覚悟を決める






「poenique」の「即興ゴルコンダ」未投稿作、タイトルは、小原 明季さん


自由詩 passage Copyright あおば 2009-10-26 23:50:26
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