欠けていて、月
石畑由紀子

(横たわる河をいつもひとり渡ったこの身も河のひと粒として)


電源を切ったつめたい指先が私の花をふるわせて、夜

私だけを、という歪んだ夢をみて卓上の檸檬が暴発する

恋人か友人かなどどうだっていいじゃないのと野菜ソムリエ




やさしみの湿度でマスクはけむりゆきヴィルスと呼ばれるものと眠った

(しんしんと電気のふりつもるセーター)(蜜柑剥く指とめてあなたは、)




オリオンの肩から冬の大三角 ほんとうはいつも答えを、知ってた、

悩んではいない迷ってもいない振り切ってるだけだマイナス/プラス




君を傷つけられるのは私だけ登坂車線の右側を行く

欠けていて月うつくしい 間違ったままで私はあなたが好きだ






短歌 欠けていて、月 Copyright 石畑由紀子 2009-10-26 21:05:06
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