絵描き
……とある蛙

筆を持つ腕の無い僕は
口で絵筆をくわえ
カンバスに向かって
朱色を引いた

引いた朱色は次第に濃くなり
カンバスの中央で丸くなった
カンバスの下には申し訳無さそうな
地平線があり
空を無理やり作ろうとしていた。

僕は口でくわえた絵筆で
楽しげな駝鳥の青い顔を描いた
彼は地平線と反対方向に顔を向けている
そう、
駝鳥は僕の方を向いているのだ。

駝鳥は僕に語りかける。

うまくやっているか。
他人(ひと)を褒めているか。
他人(ひと)の戯れ言に付き合っているか。
他人(ひと)に羨望しているような顔をしているか。
必要以上に他人(ひと)と話さないようにしているか。
さえない面構えを他人(ひと)に見せているか。
ばれないように演技しているか。
目立たないようにためこんでいるか。



僕は絵筆を口にくわえたままニヤッと笑った。


自由詩 絵描き Copyright ……とある蛙 2009-10-22 09:49:10
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