かいそう
若原光彦

俺は夜道
コンビニからの帰り道
考えごとをしながら歩き
歩きながら考えごとをし
メモを取ろうとふと立ち止まり
ああ手帳は
置いてきたのだったとふと
星のない空を見上げ
生気のない壁を眺め
振り返るとそこには
俺がしまったという顔で立っているのだ
だが俺もどうせ
しまった畜生といった顔で
振り返っているのだろう
どちらともなくにやにや笑いを浮かべ
ごみはごみ箱へという標語がなぜか頭に浮かび
俺はぷいと前を向いて歩き出す
するとそこには
しまった畜生といった顔をした
俺が振り返っているのだ
なんてこったよわかっちゃいたがと
笑いを禁じえず頭が痒くなり
もじもじとしていると
俺はぷいと前を向いて
すたすた歩き去っていくのだ
そうだろうともそうだろうとも
そうでなくてもそうだろうとも
どこか遠くで救急車のサイレンが聞こえ
地平線の斜めうえ
満月へ向かう秋月が眠そうに膨れ
最後に泣いた日から
随分と掛け替えのないことをした
俺はもう家に帰っているだろうから
俺ももう家に帰らねばなるまいよ
考えごとは
皆で考えたらよかろう
あと一周
あと一周だけしたら
お前たちも帰ってくるがいい


自由詩 かいそう Copyright 若原光彦 2009-10-09 22:36:06
notebook Home 戻る