おひとり戦記
あおば

              090923






萎びた地球に
問うてみた
感じたままを素直に
吐いてみてと
言ったのだが
萎縮したのか
言いたいことがまとまらない
ようだ
だから負けたのだと
声なき声が呟くが
自主性を無くし
ここにも用がないから帰ると言えないのが
辛い
カーナビの渋滞情報を横目に
喫茶店でお茶をする人は居ないかと
目をすうーっと走らすが
喫茶店はどこにも見えない
ここは公園のベンチ前だ
東京生まれは撃たれ弱いと
背筋を伸ばす
延髄切りに耐えた首筋も
脊髄パットの猛攻には耐えきれないようで
街道ライダーは
暑い中を身軽な格好ですっ飛んでゆく
ぶつからないように
こけないようにと
それだけは切に願う
神仏を信じていないものの願いは
どこに向かうのか
鎌倉街道から
永福寺に向かう途中
明日からは秋といわれたツクツクホウシが
聞き取れないだみ声で
懸命に経を読む
少し蒸し暑いのが救いと
公園の水飲み場で水を飲む
縄文人の居住跡がコンクリートで保存されている
四阿のような家か
縦穴式の住居か
定かでないが
いくつかの穴が
大地に深く穿かれていて
太い柱でも大丈夫だと
言いたそうな遺跡跡を残して
神田川沿いの道をひたすら辿ると
旧帝都電鉄改め京王井の頭線電車がスマートに走る
湘南型2枚窓のスタイルを前面に残し
20メートル4扉車は
車を持たないハイティーンの身軽な躯を座席に埋め
定刻に発車する
小銭入れの中には
残金136円






「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは鈴川ゆかりさん


自由詩 おひとり戦記 Copyright あおば 2009-09-23 22:11:19
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