アポカテラロ 駅
人 さわこ

手を取っていたい。デジタルカメラ。
辺りに希望はなく、真夜中の別れみたいな数分。
私ともう1人は、知っている場所を教えあった。1本道、誰かが待っている事もない。決して、何処へも繋がっていないから、信じられるものがある。約束をした、必ず変わることを。高価な機械を壊したらしい、とても叶わない夢を見たらしい、それでもまだ生きている。それでもまだ少し生きていても良いという、自分が自分に対して、強く思う。あなたの。
でも、どうせなら得をしたいと思う。羽ばたいて落ちていった昔話の鳥にも未来があったんだと。それを守りたいと思う。昨日見た映画をなんとなく否定しながら、心の中では繰り返していたこと。私だけに訪れる幸福。

国頭郡本多町字岩川425番地 23:00

交通事故。無人の大型トラックに衝突し大学生4人が死亡。
過去の一瞬と重なる無関係の感情。祈りつづけた空を諦めた日。見覚えのあるその手招きを見て怯えた私は、ただきっちりと待っている運命に声も出ない。雨の音。想像した外とは別に、何度も何度も新しい世界が広がっていた。見えないだけの、何も感じないだけの心は隙間を探して、やっと今始まる。逃げてしまいたい。向き合わずに殺してしまいたい。両腕で突き放して裂いて燃やして遠く遠くに置いてきた。私の名前。ただ、存在した。ただあった。小さな罪。

なんでかって、私は明日が良い。


散文(批評随筆小説等) アポカテラロ 駅 Copyright 人 さわこ 2009-09-02 11:45:24
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