夢みればいつも〜満月とスバルがなかよく散歩する深夜
草野大悟

夢みればいつも
きみは風になっていた

ぼくの右腕をまくらに
くうくう眠っていたきみは
もう、そこに吹くことをやめ
だれも頼りにできない
だれも近づけない青空へ
鎖を断ち切り
安らかさを脱ぎすて
旅立ってしまった



夢みればいつも
きみは光になっていた

ねぇ、無責任な風の吹く
あの夏に戻ってみない?
草いきれの深夜
満月に放精するサンゴの
うす桃色の未来に
やあ、と声をかけて
あら、こんなところで
真実が死んでるわ
なんて
月の光に囁いたりしてみない?



夢みればいつも
きみは虹になっていた

落ちてきたんだ
あまりにもあっけない落ちかたで
ポトン、と、海に

よく知っている連中に言わせると
やっぱ、空に飽きたんダロ
ということになるけれど
どうもそうではなく
地中深く潜行し尽くした後に空に昇って
華やかに、どうだい、という生き方に
愛想が尽きただけ
ということらしい


夢みればいつも
きみは夢になっていた

海のリズムそのままに
腕と腕をしっかり絡め合いながら
一生に一度だけの交接をするコウイカの必然が
ふたりの命を持ち去ったとしても
満月が笑う夢の中を
ぼくは
きょうも
風たちを探して
さめざめと彷徨っているんだ




自由詩 夢みればいつも〜満月とスバルがなかよく散歩する深夜 Copyright 草野大悟 2009-08-08 23:06:25
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