短編フィクション
竜門勇気


今朝、壁に向かって日課である料理をしていると、モグラの夫婦が冷たいレモネードを携えてやってきた。
玄関のツタと春雨とモビルスーツの絡んだインターホンの前で二人と話す。

どうしてあなたって言う人は何度言ってもそれをやめてくれないのか。
モグラは言った。

ぼくは今朝の食事を作っているだけですし、随分と気を使って観葉植物を幾つもすりつぶしていますが、苔の話ですか?苔なんですか?電話しますか?

いいえ、そうじゃありません。あなたが壁に向かって料理をするとわたしの嫁はまるで米朝の子誉めを聞いたかのように苦しみ、水を飲んでは服をたたみます。それらは額の中にあります。

水掛け論になりそうなのでドアを閉めると、モグラの奥方が挟まれてキュウと泣いた。
これはいけない。他所様の奥方をぺしゃんこにぼくはしてしまったのだ。これは許されない。謝っても最悪裁判で情しか知らない民間人に死刑といわれ、法のプロフェッショナルである裁判官に殴りかかられ最終的にやっぱり死刑となる。
その後恩赦が与えられるが恩赦の直後にやっぱり死刑となる。余った電力で処刑される。
ですから今すぐに振込みが必要です。
指定の口座番号に母さんの善意が猛威を振るいますよ。かけがえのない地球に今できることですよ。

ここまで話すと母さんは
「やっぱり病院だね。一緒に治そう?がんばろうね。」
と呟いて電話を切った。


散文(批評随筆小説等) 短編フィクション Copyright 竜門勇気 2009-08-07 10:37:27
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