誰が豚かを決めるのは俺だ(3) 私の選挙演説
花形新次

 えー、高いところから失礼致します。
私が今回の衆議院選挙に神奈川60区から立候補致しました、茗荷谷ひろし、茗荷谷ひろしでございます。
いやいやどうも、そこの奥さん、旦那とはどう?うまくいってる?こっちのほうは?
(両手を前に突き出して、腰を前後させる)
エッ、変態野郎?はっはっは、奥さん、実に熱烈なご声援ありがとうございます。
−いいんだよ、分かってるよ。これからだよ、うるせーなあ。

 えーっ、冗談はこれぐらいにして、本題に入りたいと思います。
何故、私が今回の選挙に立候補したかと申しますと、それは、この現代日本を取巻く
ヘークソ状況を何とかして打開すべく…。
−何だよ?しつこいぞ。横からごちゃごちゃ言うんじゃねえよ、まったく。なにっ、聞こえないよ、そんな小声じゃ。もっとデカイ声で話せ!うん…、うん…、ヘークソではない、閉塞の間違いですだあ。どっちでも一緒だよ!いいから黙ってろ。今度なんか言ったら、コンクリ詰めにして相模湾に沈めるからな。わかったな!

 はっはっは、どーもすみません、皆さん。こいつがね、秘書っていうんですか、一昨日バイトで雇ったんですけれど、自給650円でね。なんかね、いちいち人の言うことのあれがおかしいだの、これがダメだのと意見しやがりまして。今もそうでしょ?見てたでしょ?いや、うるさいのなんのってね!
なんか大学出てるからだかなんだか知らないけれど、威張りくさってまして。まあ大学って言ったって三流なんですけどね。
それに比べりゃ私はあのMITを卒業してますんで。MITね、三崎口イミテーションテクノロジー文化学院。知ってる?知らない?じゃあ、家帰ったら調べてチョーダイ、ウェケペチカかなんかでね。

−てっめえ、また今何か言おうとしたろ?
ちょっと皆さんすみません。野暮用ができまして。しばらく御待ち下さい。
オイコラ!てめえ、ちょっとこっち来いや!
今度という今度は許さねえからな!エエ、何だオラッ!ウェケペチカじゃないです、ウィキペディアです…。うるせえ、同じじゃねえか、どこが違ってるんだ!
俺があれほど、ごちゃごちゃ言うんじゃねえって言ってるのに、この野郎は〜。
 おお、何だあ?やろうってのか?面白え、ベトナム還り元グリーンベレーの俺様に刃向おうってんだなあ…。
 よっしゃあ、来てみろやあ!
 
 イタッ、イタッ、何だ、何でホッペをつねるんだ、イタッ、イタッ、イタッ、痛い!痛い!痛い!イターイ!イタアーイ!モ〜ウ!ヤメレ〜!
 ハア、ハア、ハア…、何すんだよ…、痛いじゃないか…。しかも商売道具の顔に〜。あ〜痛かった〜…。
 オマエなんか首だからな!きっとホッペは真っ赤だぞ〜、くそ〜(涙)。

 こんなバイトこっちから辞めてやる、この泡沫候補が、って?

 また難しいこと言いやがってえ〜、俺が無法松だと〜。

 ちょっと待てよ…、確かに俺も無償の愛を人間空母ノリちゃんに捧げるつもりだったが。…そうか、そういうことか!分かったぞ!俺はやっぱりノリちゃんのためにこの全生涯を捧げるべきなんだ!
ありがとうバイト君!君のおかげで、君がホッペをつねってくれたおかげでやっと目が覚めたよ!
俺の進むべき道は別にあることを、君が教えてくれたんだ!
よーし、こうしてはいられない。俺はもう行くよ。
後は君に任せたからな!君ならきっと出来るさ。
それでは、またね〜。

なんだあ〜、てめえらまだそんなとこに居やがったのか〜。
見せもんじゃねえんだよ!とっとと家帰って、テレビ見ながら屁でもこいてろ。
このボケが!




散文(批評随筆小説等) 誰が豚かを決めるのは俺だ(3) 私の選挙演説 Copyright 花形新次 2009-08-03 11:56:53
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