べらべらべら。ごきげんな音だ。けつを拭く紙にもならないが、まともな本にも使えないような出来損ないの紙切れの束がめくれる音だ。
ユーズドの捨て台詞と共に床に落ちたままの俺の右目がたどり着いた場所はページの表紙裏、ゴミ屑でできた脳ミソで書き上げたと思われるお決まりの「人物紹介」だ。
どうやら俺は「ゴミ屑でできた脳ミソを持つ作者の本の中の世界」「薄ぎたねえパルプ・フィクション」そういった中にいるらしい。
ここにも腐ったキャベツに群がるコバエのように銀の移民どもががっついている。どきやがれ!怒鳴り声を上げると機嫌を伺うように連中はその身を引いた。しかし立ち去ったわけではなく、機会を狙うように蠢きへし合い、俺に視線をくれている。
なになに、主人公はどんな奴なんだ?それはつまり俺のことだ。めんどくせえ。どれどれ?
”RIO・・・見出すはソフト帽を・・・このユニバースを握り・・・”
意味がわからねえ。あの銀の移民が食い散らかした後に違いない。
忌まわしい連中だ。精一杯の威圧のつもりで俺は連中を睨みつけてやろうとした。とその時俺の視界に見慣れない物を見つけた。俺にひどく近い場所に・・・布?そして俺から伸びた細長い・・・腕?
俺はとっさにそれを振り払おうと四苦八苦したところで気づいた。四肢を取り戻している。まるでねずみに齧られたように細いが右目だけの存在であるよりはマシだ。最高だ。どうやら服も着ているらしい。ぐちゃぐちゃのキルトの切れっ端を三歳のバカガキが縫い合わせたならこうなるであろうというデザインだ。
俺は幾分か気分がよみがえり、また「人物紹介」を読み返そうと・・・したら!クソ移民のクソ食欲め!またむさぼるように群がってやがる!
俺は得たばかりの手足を振り回し奴らに掴みかかった。寸でのところで奴らは身を翻し、かき消すようにその姿を消した。くそったれ!一匹ぐらい踏み潰してやりたかったぜ!
俺は呟いたが、体を覆う布切れの端に白く噛み千切られた跡を見つけてクールさを身につけることを誓った。
連中はまだ食い足りないのか?俺の世界はもうむちゃくちゃじゃないか。頭の中で記憶のピースを抜かれ、出鱈目に組みなおされるような感じがする。このまま奴らのクソになるのが賢いのかもしれない。このちぐはぐな世界に取り残されるよりは。
クソっ垂れ。今するべき事をするんだ。いや、これしかできることはないんだがな。
再び「人物紹介」に目を通す。ああ!さっきよりもひどく虫食い穴が広がっているじゃあねえか!もうまともな文章としては読めない。そう思いながらも何かヒントでもないかと俺は文字に手を触れた。
その瞬間!文字が右から左にギラリと光って消えうせた!そしてあのいまいましい警官の光線銃によく似た衝撃がこめかみから走り、文字が、痴呆染みた意味の羅列が俺になだれ込んだ!
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ようく分かったよ。俺は死ぬらしい。