地底刑務所の生活
きゃとる
雲一つ無い晴天は私の心を曇らせる。
余りにも清清しい青は、私に逃げ道を与えることなく迫り来るからだ。
今朝はそんな空の下、いつものように高い塀に囲まれながら朝礼をした。
一日のうち外に出るのはこの時のみで、朝礼と二、三の仕事が終ると看守たちに監視されながら、一人ひとり高速列車に乗りこみ、地中トンネルを通って瞬時に地球の中心部へ移動させられるのだ。
マグマに程近いその場所では、発電の為の単純労働をこなすのが私の日課であり、刑務である。否、それはここにいる全ての人間にとっての今日であり明日であり、死ぬまで変わらぬ日々なのだった。
ここのところは看守たちの怒声にも何も感じなくなってきた私は、この暗闇に包まれた監獄の中で地球の煤にまみれながら、よもやそんな自分の姿に気づく暇も無く、ただひたすらに体力を酷使する生活を、案外心地よく感じ始めているのだろうか。
ここには義務しか存在しないが、不安は無い。当然自由なんてものはないが、来る日も来る日も永遠と同じ事を繰り返しているうちに、最早そんなものはどうでもよくなってしまった。
死ぬまでの時間が完全にパッケージ化されている中では、あらゆる思考能力や感情が抹殺される。無論不安も生じ得無い。自由の身であって初めて不安は生まれるものだから。
それでも初めのころは、傲慢な看守たちの理不尽な扱いに対していちいち声を荒げていた。
それも次第に、この狭い社会の中では完全に無駄だということを悟って行った。死ぬまで囚われの身であるということを、本当に理解したとある瞬間が、私の中にはあったのだろう。それ以降は、どんな命令にもただ従うだけだ。
「ここで生きて行くより他無いから?」
ぼんやりとした頭に時折遠くから微かな声が聴こえてくる。
「あなたの名前は…?」
労務に戻ればそんな声もすぐにどこかに消えてしまう。
しかし、晴天の朝だけはいつも変わりなく、余りにも残酷な真実を突きつけてくるのであった。