左胸にブローチを
ゆうと



ぼくには、会いたい人がいっぱいいる。
それってすごく、しあわせなことじゃないかな。
また会える人、もう会えない人、いつか会える人。
その、みんなに会いたい。

こんなことを考えている、夜。
胸が苦しくなるのはきっと、
思い出をぎゅっと握っているからだ。

しあわせって、逃げてしまうものだと、ぼくは考える。
しあわせは、感じるものだから。
だけど、宝物は、逃げないね。きっと。
左胸にブローチを、つけるみたいに。
宝物は、物だから。

それは、新しいのでも昔のでも、きっときれいなブローチだ。
いつもきれいであってほしいから、ぼくはピカピカに磨いていたい。
そしてそれはきっと、自分自身を磨くことでもあるだろう。

この左胸のブローチは、ぼくに生きる力をくれる。
血のようなもので、心臓みたいなもの。
たぶん絶対消えないから、とてもたいせつにしていたい。

このブローチは、かけがえのない、ぼくにとっての宝物。





散文(批評随筆小説等) 左胸にブローチを Copyright ゆうと 2009-06-22 02:16:35
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