ノート(夜の速さ)
木立 悟



夜は速い
夜は速い
これから向かう世界のすべてが
わずかに低く傾いているかのように
夜は速い
夜は速い
背に積み重なる力のように
夜は速い
夜は速い
誰かに遠去けられているかのように
速さは増す
速さは増す
背より高い草の原に立ち止まり
もう一度進みはじめても
夜は速い
夜は速い
わたしだけを切り取ってゆく
影を固めたような風
夜は速い
夜は速い
誰もいない道に張られた
蜘蛛の糸のゴールを過ぎても
夜は速い
夜は速い
どこへ着くのか教えてもくれずに
夜は速い
夜は速い
とどまることなく
ただ独りの傾きを飛ぶ





未詩・独白 ノート(夜の速さ) Copyright 木立 悟 2004-09-02 16:55:11
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