蛇つかいたちの行進(2)
吉岡ペペロ
耕太ら若手社員は九時から開始する新規開拓ダイヤル作戦に備えていた。
パソコンの画面をターゲットの会社のホームページにする。
何度も目を通した商品紹介ネタの模範トークにもう一度目を通す。
右手でボールペンを回していると耕太は尾久の風貌を思い浮かべていた。
尾久の風貌は、地に足のついた泥くさいものではなかった。
どちらかと言えば育ちのいいイケメンだ。三十代前半ってとこだろう。
隣のセールスが、どう思う、と聞いてきた。
すぐコンサルタントのことを言っているのだと分かった。
イケメンでしたね、耕太は藤本にそう返した。
新規開拓ダイヤル作戦が開始されたようだ。二階のフロアがあっという間に電話の声でざわめき出した。
そのざわめきを耕太はしばらく聞いていた。
大橋っ、電話せんかい、
そんな怒声がじぶんに飛んだような気がした。
それでも構わずざわめきを聞いていた。
耕太は朝なのに黄昏れているような外を見やった。
それからざわめきを、ひとつ、ふたつ、みっつと空気みたいに飲み込んで、新規開拓ダイヤル作戦を開始した。