NO!
吉岡ペペロ

土煙りの中から少年と大男と若い女が現れた

少年と大男は同じ鳩と繋がっていた

若い女はこの世界の法則の例外を

そんなこともあるのかな、程度にしか気にとめていなかった

大男の右頬から首の付け根にかけてはぎょっとするような傷あとがあった

かつて若い女はそのグリーンの瞳で世界を見ることができなかった

女の視線と合った視線の持ち主は

その数分前まで記憶を失ってしまうのだった

幽閉されていた女を救い連れ去ったのは

大男と少年のふたりだった

女は十なん年ぶりかに世界を見た

女は世界の法則を知っていた

ひとは皆、ひとりに一羽ずつ鳩と繋がっていることを

少年が今夜泊まる宿を偵察しに走った

おねえちゃん、だいじょうぶだよ、

いつも少年は女のために建物のなかに

避けられないほどの鏡がないのを確かめてくれるのだった

大男と少年はよく見るとその容貌が似ていた

でも親子でも親戚でもないという

大男が舌打ちをした

少年が腰袋から石を取り出した

少年がなにかつぶやくと石は濃い月の色になる

NO!

少年が叫ぶ

前方に石を投げるともう何度も見た怪物が

空間をひきちぎるように現れて

獣の断末魔をあげて焼けるように蒸発した


散文(批評随筆小説等) NO! Copyright 吉岡ペペロ 2009-06-04 00:38:10
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