覇権の〝遺贈〟 映画グラン・トリノ GRAN TORINO
A-29
世界覇権の欧米からアジアへの移行をテーマとした映画と思われた。
ただし映画はこの「移行」は死を以って償われる「遺贈」によってなされるものと表現しており、しかもその贈与の実体を悪燃費のアメ車で象徴している。
また贈与の対象主体としてわざわざラオスをはじめとするアジア各地に散在する山岳民族を選び、あえて中国人を避けている。
映画である以上一定のロマンティシズムは必須である。これはこれで不満はない。
ところで現実はどうなのか。「世界覇権」などというものはじつのところ二義的なものに過ぎないのではないか。だからこそ移動するのではないのか。都合によって。譲れないものは依然として同じ者らの手中にとどまるものと感じる。