「赤い城 黒い砂」
猫のひたい撫でるたま子
素直、素直と言われて育ってきた
そう言われてきたからそう信じてきたけど、近年はどちらかというと閉じていたので少しひねくれた言葉遣いになってきていることに気がついた
何か伝えるのが怖いひとにほど言葉は萎縮し、ばーっと心を開ける人が現れると100%で対応してしまうし、自分の個性が素直なんだか何だかよくわかんなくなってきた
「赤い城 黒い砂」という舞台を見に行って、久しぶりに涙した
お札を拾った少年が警察に届けると誉められた、そうすることが当たり前だと思っていたからそうしただけなのに、それをポケットにしまって自分のものにした同級生は非難された
そんなイントロで始まる舞台
赤い国と黒い国の二国が争って大量殺戮兵器を使い、二国の姫と戦士が互いに滅んでゆく国を抱えながらも惹かれあうものの、その時代の彼らには戦うことでしか愛情表現が見当たらない、同国の戦友だった男の片割れが国と友情を裏切り殺し合う、しかしラストでは更なる武力をもった第三国の青い国が参戦してきてしまう
もっと複雑だけど簡単に言えばこんな筋書きだった。
私が驚いたのは10人程度出てくる登場人物がそれぞれの立場で性格なりが歪んでいても、誰の立場も肯定も否定もできないところだった。
一番惹かれたのは洞窟内の牢獄で働き、地上を知らない少女が死刑囚になった男に恋をして逃げた先の地上の光で失明してしまい、また真っ暗い洞穴に父親の歪んだ愛情から閉じ込められるうちに、自分を慰みものにした同国の兵士たちに呪いをかける場面。
9.11が起きたとき、しいたげ続けられた人達の呪いが爆発したんだという沖縄出身の年上の言葉を思った
一番汚れないのは最後に滅びゆく一国の姫さま。個人的な愛を知ってしまう以前に、民衆をまとめて旗を上げなくてはならなくなる立場の人。しかし、彼女が個人的な愛欲を知っていたなら敵国の戦士と共に死んだと思う。
恋愛(と呼ばれるものと執着心とは私には判断がつかない)を持たないものだけしか強くいられない。しかし、戦下という状況や年齢的なものでしか実現しにくいから現代人には公平になれる政治的リーダーがいないのかもしれない。
裕福ゆえ、ポケットにお札を入れることを知らなかったことに傷ついてしまった純情だった少年は、愛する妻の喪失感から暇つぶしのように殺戮兵器を買ってしまう国王すら愛おしく見える世界、争いは絶えず繰り返される不平等を平等に描く世界の縮図を見せてくれた。
泣くぐらい感動したのは久しぶりだった。
ーこれからもあなたが求めるものほど失われてゆくだろうー
これは大好きな吉井和哉さんの言葉
追いかけたいものほど気持ちの分量の分だけしっかり離れてゆく
言葉は常にうまくまわらず、だからこそ考えてしまう
お月さまが美しいのはいったことがないところだから