Go Back Sunday
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リバーシブルのカーディガンにブルースウェードシューズ。
帽子はやめてメガネをかけた。だけど度は入っていない。
白黒のカバンのポケットにはキーケースと携帯灰皿。
大事なものはココには入れない。雨の降る日はまた別だけど。

昨日の夜まで薄桃色に染まっていた角のたまりは当然だと言わんばかりに香りを変えて、
大きな煉瓦越しに緩慢な注意を促していた。
出来たてのビルには早くもスプレーの落書き。
何の主張なのかは分からないが、出来損ないの契約書に書かれたインチキくさいサインのようだった。
とにかくソコに満足感は見出せないんだよ。

必ずしも善意だけで人は動かないし、諮らずともおのずとソレは見えてくるモンだ。
狐なのか狸なのか狼なのかヤンバル水鶏なのかは知らないが、どのタイミングでトビラを開けるのかが問題なんだよな。
いずれにしてもいつかはノックするコトになるだろう。そん時はそーっとね。

もうココの6階から飛び降りてやる。
と、4階建ての病院で入院中の父は不貞腐れながらそう言い放っていた。
外は調子に乗りすぎた春の陽射しのせいで過剰に暑い。
半年かけてようやく戻ってきた脳ミソと表情が、また少し退化したようだ。
数日前に飲んだアルコールの影響がこんなにも色濃く出ているんだな。

駅前に流れているほとんど水が涸れてしまった名前ばかりの汚れた溝は、一応辛気臭く川の体裁を保ってはいるが、
側道の踏み石も手入れされた花壇も汚れた溝を川へと還す手助けにはなっていないようだった。
どうやら色んな所にそれぞれの事情ってヤツがあるらしい。
アンタの都合ばかりが常に世界の最優先事項ではないというのも知っていて欲しいところではあるのだが、
求めるだけムダってコトも十二分に考えられる事だからな。
まあソレなりにアレな感じでナニしとけばどうにかなるんじゃねえのかな。

浮かんだはずの煙にまかれた四拍子のワルツを思い出しながら寺の脇道を下っていると鶯の鳴き声が聞こえた。
奪い合う為の生産の中でアイツは自分を見失い、オレは昨日を置き忘れてきた。
去勢された虚勢。カウントダウンは始まっている。
そのなれの果てへ着く頃には少しは何かを思い出しているかもしれないな。
そう言えばクリーニング屋、ずっと行こうと思ってたけどまだ行ってないや。

Go Back Sunday



散文(批評随筆小説等) Go Back Sunday Copyright BOOKEND 2009-04-22 16:38:08
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