貞操帯
Tama
「あー、空から美少女降ってこないかなぁぁー?」
スーパーの前で、空を見上げて俺はそんな事空想していた。
「んもぅ、こんな所で何妄想しているのっ」
背後から来た女性に小突かれた。
「あぁ、ゴメン。」
と、なぜか素直に謝ると、向こうも、
「あ、うん、こっちこそ遅くなってごめんなさい。」
相手の女性も素直に謝っていた。
彼女こそ、そう俺の彼女だ。
…とあるアパートにて。
「なぁ、キスしようか!」
ボキ!ボカ!叩かれた。
「馬鹿なこと言わないの、それは結婚までお預けって、最初に約束したでしょ?」
そうだっけ?
「じゃぁ、にゃんにゃんしよう!」
ドスッ。
まただ。
「それも、ダーメ。両方結婚してから」
厳しいなぁ。
「なぁ、俺たちどうやって出会ったんだっけ?」
彼女の膝枕に体を預けながら、そう尋ねた。
「えっと、いつだっけ? 確か冬だったのは覚えているわ」
彼女は、真っ直ぐとした感情をいまいち読み取れない表情で、窓の外を見つめながらそう答えた。
冬だったっけ?俺はそれすらも頭の片隅から忘れていた。どうやら幸せだと俺は必要以上に忘れっぽくなるようだ。
彼女はその表情のまま言葉を続けた。
「確か、そう寒い雪の降った日だったわ。あの日私が公園で震えているとビニール袋を手にしたあなたが、私の前に現れた。
あのあなたの姿は今でも覚えている。あ、違うのよ、かっこ悪かったからじゃなくて、私にとってはまるで・・少女趣味かもしれないけど、王子様のように見えたの」
彼女の言葉はまた続いた。
「私の前に、あなたは立ってこういったわ、寒くない?うちにおいでよ。と、私は生まれて人に優しくされた気がして、とてもとてもうれしかった、だから鮮明に覚えているのかもしれないね。
で、あなたは思い出した?」
彼女の眼差しが、彼女の膝の上、そう俺の方に向けられた。
「ああ、なんとか思い出せたよ。」
公園でとても寒そうにしていたんだだから、気になって声をかけたのだ。
「よかった」
彼女は一言そう答え、顔は再び窓の外に向けられた。
「そういえば、約束もそのときにしたんだっけ?」
俺も彼女が見ているであろう窓の方をみて、そう聞いた。
「えぇ、初めてこの部屋に入る前にそう約束したわ」
彼女も窓の方を見たままそう答える。
「そっか」
「そうよ」
その会話を最後に、何分の沈黙が流れたのだろう。
気づけば二人は寝巻きに着替え、床についていた。
二人は並んで布団に入っている。
そして、天井を見つめながら彼女に問いかけられた。
「ねぇ、貞操帯って知ってる?」
俺は驚きのあまり彼女の方をみて答える
「ああ、知ってるよ。でもどうして?」
彼女も俺の方を見て続ける
「付けてみない?」
声のボリュームを少し上げてしまった
「えぇ?!俺が?」
彼女は、周りに迷惑がかかる。といった具合に目で俺に注意をし、続けた。
「そうよ。なんなら、私もつけるわ、それでおあいこでしょう?」
1分程度の沈黙が訪れる。
「それもそうだけど」
俺は、ちょっと嫌そうに答えてしまう。
「嫌なの?」
すかさず、それを見透かされ彼女に突っ込まれる。
そして、疑問の丈を彼女にぶつけることにした。
「いや、それで信用されるなら付けるけど、あれって自慰も出来なくなるんだろ?」
彼女は少し笑みをうかべ。
「くす、そんなことで悩んでいたの?」
その笑みからは馬鹿にしたというより、好意を感じられたので、俺もにやけながら。
「ああ、そうさ、悪いかっ」
彼女は、元の表情の読めない顔に戻り答えた。
「悪くはないけど、結婚まで我慢して欲しいなぁとは思う」
俺は普通に驚いてしまい、思ったままのことを口にした。
「け、結婚まで?!」
彼女は、にっこりとこう答えた。
「うん、そこまで我慢すれば初夜で濃いのが出るかもよ?」
俺は目をキラキラさせながら答えてしまった。
「なら、がんばる!」
それから俺と彼女の貞操帯人生がはじまった。
ー半年後
俺は彼女と結婚した。
雲ひとつない屋外にて、
空には飛行機雲、
それ以外はきれいな青空が広がっていた。
俺はいま、そんな空をバックに記念撮影をしようとしていた。
カメラマン兼友人の掛け声がかかる。
「はーい、とりますよー!さぁお二人ともキスしちゃって!
顔を赤らめつつ、顔を近づける二人。
3
2
1
パシャ!
猫に顔をなめられて目が覚めた。
「・・・ふぁーぅ。よく寝た」
にゃーお。