Threepenny Thursday
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真夜中場末のラーメン屋にて。
イカの塩辛が真っ赤に染まるまで一味唐辛子をブチ込んで、
グリグリ混ぜたヤツをコレが旨いんだから食ってみろと言う。
仕方がないのでひとカケラの期待もせずに食べてみると、ただただ無駄に辛いだけだった。
続いてもやしそばの麺抜きなるものを注文し、取り皿にわけてくれたトコまでは良かったが、
その中にコショウとオレの大キライな酢を気が狂ったようにブチ込んで、
グリグリこねたヤツをコレが美味いんだから食ってみろと言う。
逆らうと面倒くさそうだったので恐る恐る口に含むと、案の定オエッてなって泣きそうだった。
しかも薦めた本人も思いっきり咽ていたし。
正直な話、彼女の料理はいつもイマイチだ。
不味くはないのだが、いつも微妙に惜しいのである。
しかしソレは仕方の無い事なのだとその夜ボクはビンビイルをすすりながら悟ったのであった。
え?ナニ?イヤ、もういらねえです。
電車の走らなくなった線路をまたいだついでに川を渡る。
味気のない密室の奥から微かにラジオの音がしてた。
いつどこへ行っても流れているような曲だ。
鼻にかかった歌声だって金になりゃソレが正解だしな。
だから今夜のところはきっとアンタが正しかったんだろう。
ソレで済むならオレに文句は一切ないよ。
春に見る夢はいつもあやふやでさ、
虚ろな街を彷徨うように隙間だらけの夜を過ごすんだ。
Threepenny Thursday