作品に固有名詞を入れる難しさ(お詫び)
白糸雅樹

 先日、私はhttp://letter.hanihoh.com/のスタイルを利用して、手紙形式の詩を書いた。作品のなかで、手紙の相手の名前を連呼するスタイルだった。

 固有名詞を作品中に用いて、他の人がモデルではないと示す為には、三つの方法がある。「A」など抽象的なアルファベットを使う方法、「太郎」「一郎」など、公式文書などで書き方の事例として用いられることの多い名前を使う方法、自分自身の名前を使う方法。

 この詩を思いついたときに頭にあったのは、私がかつててひどい裏切り方をした恋人への悔恨だった。なので、私から、「誰か」へ宛てた手紙ということで、「雅樹」という名前を宛先に使うことはできなかった。また、作品のリアリティを高める為には、仮名として使われがちな名前やアルファベットも使いたくなかった。

 そこで、私は、そのモデルになった恋人(といっても、作品中で本当なのは相手好みの料理を作れなかったくだりだけで、あとの部分はすべて創作で、もしも彼がこれを読んだら事実無根の名誉毀損だといって不快になるような内容なのだが。)に似ていない名前、友人知人にも似ていない名前で、いくらかのオリジナリティが得られるような名前を考えて詩を書いた。

 ところが、投稿した後で、その名前とまったく同名の方が、私よりもアクティヴに、このフォーラムで活動しておられることに気づいた。困ったな、と思ったが、もう投稿してしまった後で、いまさら名前を差し替えても、あらぬ勘繰りをされそうである。

 その方が、私の詩を読んだかどうかは知らない。読んでいないとよいな、と思う。私だって、「白糸雅樹さん」と詩の中で名前を出されて、しかもそれが私と無関係な架空の人物だったら、ずいぶんと妙な気分になると思う。なにもわざわざ不快な思いをすることはない。

 しかし、その方を知っている人で、私の詩を読んで、「え?」と思った方の為に、「私の詩で出されている固有名詞は完全に架空のもので、このフォーラムに同名の方がいらっしゃるのはまったく偶然で、何の関係もその方とは関係ありませんよ」ということを、作品は創作だという立場にたてば言わでものこととはいえ、公言しておく必要を感じた。

 固有名詞を使う前に、フォーラムをしっかり読んで、主な参加者の名前を把握しておかなかったのは、まったく私の軽率としかいいようがなく、申し訳なく思う。ほんとうにごめんなさい。



散文(批評随筆小説等) 作品に固有名詞を入れる難しさ(お詫び) Copyright 白糸雅樹 2009-03-28 23:06:55
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