昨夜の「ぽえとりー劇場」のオープニング
では昨日の朝、現代詩フォーラムでみつけた
nonyaさんという詩人の「鳥瞰図」と「三寒
四温」を朗読しました。
「鳥瞰図」という詩から僕は、ビートルズが
解散後10年以上?経ってから発表した新曲
「Free as a Bird」のプロモーションビデオ
を思い出し、風になったジョン・レノンの魂
が鳥のように街を巡っているアングルとこの
詩の鳥の視点が重なりました。
空を飛びながら、街のいろんな人々を親し
みのまなざしで眺めたり、エサを求めて地上
に舞い降りたりする描写がこの詩の中盤まで
続きますが、この詩の一番大事なところは、
地上のある女の子の見上げる目線に空を飛ん
でいる鳥が気づく9・10連目だと思います。
下から上へ
頼りなげに放たれた視線と
衝突する
若い女の子はうっすらと涙を溜めて
五丁目の迷路をさまよっている
たぶん大丈夫
次の五叉路はどっちに行っても出口だよ
涙を溜めた少女へのまなざしと語りかけは、
読者のこころをも暖める言葉だと思います。
そして最後の3連
昨日から今日へ
僕は相変わらず想いを伝え切れないまま
ただ空を飛んでいるよ
今日から明日へ
君はいつもそうやって羨ましそうに
僕を見上げるけれど
何処にも触れていない
誰にも触れられない
そんな自由に
果たして君は耐えられるだろうか
人知れぬ、言葉にならない思いを秘めて、
一人青空を飛ぶ鳥の自由と孤独はnonyaさん
自身を含む、詩人の姿の投影のように感じ
ました。
「三寒四温」は今の季節にぴったりの詩で、
冷たい雨の日には破れた傘を差しながら、晴
れの日には暖かな日射しを静かに歓びながら、
遠くに見え始めた春へと向かってゆく心の機
微が見えるような詩の前半でした。
僕がどんなに信じようとしなくても
人は厚手のコートを脱ぐだろうし
桜は空の裾を淡く彩るだろう
寒い季節をいくつ越えてきたか
自慢げに短い指を折っても
それで寒がりが直るわけじゃないから
温かい季節の記憶をバスタブに溜めて
首までとっぷり浸かっていたほうが
よっぽどマシなのかもしれない
人生の寂しさ・虚しさを知っているから語
れる達観した言葉から、nonyaさんという詩人
の飾らない人柄が伝わります。
たぶんなるようになるのだろうし
たぶんなるようにしかならないのだから
たとえ突然後ろから突き飛ばされて
石ころみたいに舗道に転がったとしても
温かい欠片をたったひとつだけ
握り締めていればいいや
ボブ・ディランの「Like a roling stone」
を連想する描写ですが、どんな天気の日も
(たったひとつの欠片)を密かな希望のよう
に握り締める、詩人の生き方を語りかけて来
る詩で、寒さと暖かさを繰り返しながら春に
向かって歩む人生を「三寒四温」という言葉
そのものが表しているいると思いました。
詩を読み終えた僕は
「今朝nonyaさんに初めてメールを送って、
今日の詩の夜で朗読することを伝えたら
すぐに返事をくれて、そのnonyaさんが
今、Ben'sの店内にいます。 」
と皆に伝えると、舞台前の席に座っていた
nonyaさんは立ち上がって振り返り、何度か丁
寧におじぎをしてくれて、詩の夜に集う皆か
らの暖かい拍手がnonyaさんを包みました。
※ nonyaさんの詩は以下で読めます。
「鳥瞰図」
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=176815
「三寒四温」
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=180073