並四日記 その4 秋葉原電気街
あおば

秋葉原電気街
                  2008年11月02日

風邪気味だったが、気が急いて並四ラジオの部品を求めに秋葉原電気街口を降りて、総武線ガード下にあるラジオストアの2階の専門店に行くと、驚いたことに断線した1:3低周波トランスの新古品がある。1700円なので即ちに買う。最近は小型トランスの価格も上がり、汎用品でも1000円ぐらいはするので、こんな特殊な品が2倍弱ならば良いのではと考えた。ついでにいつ断線しても不思議ではない30Hの低周波チョークコイルも購入する。1800円。再生専用のミニバリコンもあって、喉から手が出たが、2700円なので断念。いくら何でも高すぎる。真空管はやはりかなり高価で、使えそうなものは4000円以上もするので眺めるだけ。お金さえ出せば案外なんでもそろうようだと思いながらも、 30代の店主といろいろ話をしていたら、30歳前後のお客さんが話に加わる。彼のその詳しいこと、圧倒される。1930年頃の人よりもよほど詳しいのではないかと驚く。
ラジオストアを抜けて、中央通りを渡り、ラジオデパート内の古物店に行く。マグネチックスピーカーがあるのを横目に、古い電子部品をじろじろ眺めていたら、なにをお探しですかと聞かれたので、真空管用の5μファラッドの電解コンデンサーが欲しいと言ったところ、店にはなくて、電話で探してくれたが、1700円もする。いつ故障しても文句が言えない古い電解コンデンサーを1700円もだして買いたくないので、丁重に断る。私が考えていたよりも数倍は価格上昇している。しかし、高圧の電解コンデンサーは必要なので、新品だけを扱っている店で、現在の製品を1ヶ80円で購入する。形は小さいが間違いなく使えるはずだ。
33KΩ、5W型の抵抗器160円。
大体必要なものがそろったので、万世橋を横目に山の手線ガード横のお店に立ち寄る。30年前の部品も並んでいて、価格も安い。ダイヤルの、糸100円、計測器用の大型つまみ3ヶ、計570円。
50mほど歩いて、11/09に出展する「第7回文学フリマ」の会場となる東京都中小企業振興公社 秋葉原庁舎を見に行く。文学フリマ会場には地下鉄日比谷線秋葉原駅がいちばん近いようだ。ついでに裏の川を覗いて帰宅する。休日のためもありどこへ行っても人が多かった。(ただしジャンク店は閑散としていた。)

写真 
文学フリマ会場の裏川、神田川


購入した並四ラジオに必要な部品 (真空管 56,26B、再生用ミニバリコン以外は揃った。)















並四ラジオ、その後
                  2008年11月06日
真空管が揃ったので、試聴してみたが、どうにも音が小さい。再生もかけてみたが感度は上がるが音量は変わらず。ソニーウォークマンの出力をAUX入力端子に入れてみたが、ラジオよりももっと小さな音、かなり静かな部屋でないと実用にならない音量だ。どうやら増幅度が不足するようだが、並四ラジオの原回路通りにしてあるので原因が分からない。明後日の文学フリマが終了したら各段を測定して原因をチェックするつもり。

  写真は並四ラジオとしての機能が揃った状態。




再生用ミニバリコンは入手できなかったので、暫定的に小型のコイルを同調コイルに近づけて正帰還させて再生をかける。近づけすぎると情けない音でぴーぴー鳴る。悲鳴のようでもあり侘びしさが募る。
並四ラジオに当初から外部音声入力端子が備えられているのには驚く。
当時なにをつないだのであろうか。
(蓄音機のピックアップ出力を入れ、電蓄の機能を持たせたようです。)







犯人
                     2008年11月07日

試験の前のように、文学フリマからの逃避に走るのか並四受信機を眺めていたら犯人が見つかった。古いコンデンサー(蓄電器)がショートしていた。絶縁性はチェックしたのだがその時はテスターのリードの接触が不完全であったようで、絶縁抵抗値は∞を指しており、古いが間違いなく使えると思ったがやはり駄目であった。
新型のに交換したら、大きな音で鳴り出す。1m足らずのアンテナで、TBSとAFNは調子よく聞こえる。しかし電波の関係か他の局は弱い。
再生バリコンを付ければもっと再生の調整が簡単になるのだが、それは後日にしても、とにかく完成。めでたし!

写真
ショートしていたマイカコンデンサー
飴色で綺麗だが。








過去現在未来
                      2008年11月11日

過去現在未来を認識しているのは誰なのか分からないが、最近は、並四ラジオのマグネチックスピーカーからのNHKやTBSの蘊蓄を傾ける話者のトークなどを聞いているうちに、すこし飽きてきた。選局が面倒なのと、4局ほどしか受信できずもの足らず、FM放送他の番組も聞きたくなったのだが、昭和13年製の並四ラジオではむろん聞くことができない。せっかく部品を集めて復活させたのに再び永い眠りにつかせるわけにもゆかないので、ひと工夫を考えた。
並四ラジオで、FM放送、テレビも聞きたいのだが、改造しようとすると、もの凄いことになり、並四でなくなってしまうので、ラジオはそのままで外部の工夫で賄うこととした。





写真はそのシステムで、
CD付き3バンドラジオ(中波AM、FM、1−12チャンネルのアナログテレビ、CD再生)を音源として、高周波発振器の外部変調端子に接続する。高周波発振器からはアンテナまたは誘導コイルで微弱な電波を室内に放ち、その電波を並四受信機で再生する。
そのように仕組んで。
予想外に旨く動作する、周波数は、540KHzに選んでみたが、電波は呆れるほど弱く、1mも離れると最近の携帯ラジオでも全く反応しないので近隣への悪影響は無さそうだ。
右端の憂鬱な顔したのがトリオ(現在はケンウッド)の高周波発振器、ずいぶん前に新品で購入したのだが、実働100時間程度で、長く押し入れの中で眠っていたもの。
これで並四ラジオでCDの詩の朗読も含めていろいろ聞くことができるようになった。
もちろんモノラルなのですこし臨場感に劣るがもう一台並四受信機を誂えて、ステレオにする気持ちは無い。 並四で受信するとモノラル再生なので、ステレオが当たり前の現在では臨場感が乏しく感じられるが、やむを得ない。古い機器での完全対応は難しい。
先日の文学フリマでゲットしたヨケマキルさんの新譜「SADISTAR」も聴いてみたが、
スピーカーの特性もあり楽器の音は抑制され、音声が強調され、甲高く色付き、メッセージ性が強まって感じる。







指定席
                    2008年11月13日


ガジガジの芋を囓るときは
財布の紐を緩めてはなりません
12000円くらいの給付金で
油断してはなりません
年収1800万円あるからって
ガジガジの芋を捨ててはなりません
前を歩く男がつぶやいている
うしろの男も
芋を囓っている

並四受信機の音が
ピーピーと煩く鳴って
近代化を告げて
軍艦行進曲を奏でる

ラッパが鳴るから
行進するのだと
うしろの方から
ニョロニョロと蛇が
かわいらしいカナヘビが
明るい空を見上げていると
虹色の鱗を見せびらかして
蜥蜴が前を横切る

美しい光景が拡がって
庭園には薔薇が咲き乱れ
人々は秋を楽しんでいる
詩を朗読する声も
青空に拡がってゆく
こぢじんまりとした
旧古川庭園の緑が
頑張っているから
蜥蜴たちも安心して
休日を楽しんでいられる
晴れた秋の風が
隣の家にも訪れて
湿った仲間達を
誘い出して
矢印を空に描く








散文(批評随筆小説等) 並四日記 その4 秋葉原電気街 Copyright あおば 2009-03-02 20:33:56
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