絶望についての対話(3)
Giton

 (承前)
P:いや、たいへん気持ちよく聞かせてもらった。君の話は、オリュンポスの丘を渡る風のように、右の耳から左の耳へと心地好く通り抜けたが、ぼくの頭にはただ一つの印象だけが残っている。それは、君もまた、ただ一つの実在を求めて足掻いているということだ。

A:ペテルスのヤハヴェ教への勧誘なら、御免蒙りますよ。

P:君とは、もっと話をしたくなってきた。
 ひとつ、問題を出しておこう。さきほど君は、人を愛することはできても信じることができないと言った。
 ところで、「愛する」の対象は、特定するのか、しないのか?「信じる」の対象は、特定するのか、しないのか?
 答えを考えついたら、また訪ねて来たまえ。
 もう外が白んできたようだ。君は体操場へ行くのだろう。ぼくも、馬小屋へ、飼い葉を遣りに行くとしよう。


散文(批評随筆小説等) 絶望についての対話(3) Copyright Giton 2009-02-28 02:40:09
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